「なぜ、うちのブランドのリピート率は低いのだろうか?」
そんな悩みを抱えていたら、“ロイヤルティマーケティング”に重大なヒントがあるかもしれません。
ロイヤルティマーケティングとは、顧客に自社ブランドの商品・サービスを長期にわたって利用し続けてもらうことを目的として、顧客ロイヤルティ(愛着や信頼)の深化に重点を置く手法です。
リピート率が低いブランドは、顧客ロイヤルティが低いために競合他社のブランドにスイッチされやすいといえます。
ロイヤルティマーケティングは、ビジネスの根幹となる収益に直結する重要な戦略です。
しかしながら、
「ロイヤルティマーケティングって、具体的に何をすること?」
という疑問には、明確な答えが得にくいのではないでしょうか。
この記事では、ロイヤルティマーケティングの基礎知識から7種類の戦略まで、具体的に解説します。
ロイヤルティマーケティングを実践し、持続的なビジネス成長を実現する一助としていただければと思います。
最初にロイヤルティマーケティングとは何か、基本の知識からご紹介します。
語句の意味から確認しておくと、ロイヤルティ(Loyalty)を直訳すると「忠誠心」です。
ロイヤルティは、君主などに対する忠誠の心を表す言葉ですが、現代のマーケティングでは「顧客ロイヤルティ(Customer Loyalty)」という用語が、よく使われています。
顧客ロイヤルティは、顧客が特定のブランドや商品に対して抱く「強い信頼や愛着心」、およびそれによって生じる「繰り返し購入したいという意欲や行動」のことです。
ロイヤルティの高い顧客は、まるでそのブランドに忠誠を誓ったかのように、ほかのブランドに浮気することなく、一貫して同じブランドを利用し続けます。
多くの人が混乱しやすいポイントなので補足しておきますが、日本語の「ロイヤルティ・ロイヤリティ」は、2つの英語に対して混在して使われることがあります。
・Loyalty:忠誠心(用例:顧客ロイヤルティ)
・Royalty:特許権・著作権などの使用許諾料(用例:ロイヤリティフリー)
本記事でテーマとしているのは、前者の「Loyalty」のほうです。カタカナ表記は「ロイヤルティ」に統一しています。
後者の「Royalty」におけるマーケティングは、ライセンスビジネスなど別のトピックとなりますので、ご注意ください。 詳しくは「ロイヤルティとは? - 心理面/行動面の違い・高めるためのステップ/ポイントなど徹底解説!」の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
話をもとに戻しましょう。
冒頭でも触れたとおり、ロイヤルティマーケティングはビジネスの根幹ともいえ、重要性はますます増しています。
その背景には、現代の消費者行動の変化が挙げられます。過去と現在に分けて、整理してみましょう。
【過去】
・商品やサービスの選択肢が少ない
・競合他社の情報を知る機会が限られている
・自分が訪れて購入できる店舗が限られている
【現在】
・商品やサービスの多様化が進み、数多くの選択肢がある
・インターネットによって、世界中の情報を瞬時に入手できる
・ECサイトなら、いつでもどこでも購入できる
過去は、たとえ顧客ロイヤルティがなくても、持続的にリピート購入する顧客が存在しました。なぜなら、さまざまな制約によりほかの選択肢がないからです。
しかしながら、現代の消費者は、無限の選択肢を得ています。
さまざまな制約がなくなったとき、何を拠りどころとして商品・サービスを選択するのか。それが「顧客ロイヤルティ」なのです。
近年、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を重視する企業・ブランドが増えています。
前述の顧客ロイヤルティの重要性と、LTVの重要性は、根幹では同じことを言っていると理解しておきましょう。
LTVは、1人の顧客がビジネスにもたらす全体的な価値を指す概念です。
具体的には、ある顧客がブランドと接点を持ってから顧客関係が終了するまでの間に、その顧客から得られた収益の総額がLTVとなります。
※計算方法などの詳細は「LTVとは?重要視される背景や計算方法、向上のための施策例を解説」をご確認ください。
ここで、ロイヤルティマーケティングの役割が明確になります。
ロイヤルティマーケティングは、顧客がブランドを継続して買い続ける理由を創出し、顧客ロイヤルティを増幅させ、結果としてLTVを拡大させるのです。
具体的にどのような効果が期待できるのか、次章で見ていきましょう。
ロイヤルティマーケティングに取り組むことで、具体的にどのような効果を期待できるでしょうか。4つのポイントが挙げられます。
1.リテンションレート(顧客維持率)の向上
2.顧客獲得コスト(CAC)の改善
3.客単価の向上
4.ブランドイメージの強化
以下で詳しく見ていきましょう。
1つめは「リテンションレート(顧客維持率)の向上」です。
先ほどのLTV向上と通じるポイントですが、ロイヤルティマーケティングによって、「繰り返し購入し続けたい」という意欲が高まると、リテンションレートが向上します。
※チャーンレート(解約率)を計測しているブランドの場合は、チャーンレートが改善すると考えてください。
リテンションレートが高い水準で安定していると、企業のキャッシュフローが安定しやすくなります。
ブランドの価値を高める投資に資金を回しやすくなるため、好循環が生まれていきます。
参考:リテンションレートとは?メリットから具体的な手法まで徹底解説!
2つめは「顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)の改善」です。
ロイヤルティマーケティングは、新規顧客の獲得より既存顧客に焦点を当てる戦略のため、
「なぜ、顧客獲得コストが改善するのか?」
と、疑問に思うかもしれません。
じつは、ロイヤルティマーケティングは、顧客獲得にも大いに貢献し、その傾向は近年、強まっています。
ロイヤルティマーケティングによって顧客が獲得できる仕組みは、ロイヤルカスタマー(ロイヤルティの高い顧客)からの推奨・口コミです。
たとえば、「仲良しの友人が推しているブランド」であれば、自分も購入してみたくなります。
現代は、インターネットによって人々が広くつながっていて、ロイヤルカスタマーによる推奨が、世界中に届く状態です。
広告などの費用をかけて新規顧客を試みるよりも、高い費用対効果で新規顧客を獲得できます。
3つめは「客単価の向上」です。
ロイヤルティの高い顧客は、そのブランドのアイテムを数多くそろえる傾向があります。
例をひとつ、イメージしてみましょう。
ロイヤルカスタマーが多い国内ブランドとして「無印良品」があります。無印良品のロイヤルカスタマーの生活は、以下のようになるでしょう。
・〈体にフィットするソファ〉に座り、〈不揃い バナナバウム〉をつまむ
・〈シリコン調理スプーン〉を使ってチャーハンを作り〈磁器ベージュ皿〉によそって食べる
・洗顔して〈導入化粧液〉で保湿し〈ホホバオイル〉を塗る
・〈脚付マットレス〉に横になり就寝する
上記の〈〉で囲まれた部分は、無印良品ブランドのアイテムです。
同様の傾向は、アパレルブランドから食品、消費財、家電、テクノロジーまで、幅広く観測されます。
リテンションレートのみならず客単価も向上するため、効果的に収益が増加していきます。
4つめは「ブランドイメージの強化」です。
顧客ロイヤルティが高いブランドは、顧客以外の人々からも「良好なブランドである」という認知を得やすくなります。
たとえば、以下は顧客ロイヤルティの高さに定評のあるブランドです。
・Apple(アップル)
・Starbucks(スターバックス)
・Disney(ディズニー)
・NIKE(ナイキ)
・星野リゾート
自身がこれらのブランドの顧客ではなくても、ポジティブな印象を持っている方が多いのではないでしょうか。
その“ポジティブな印象”は、ブランドのどこに転化できるかといえば「価格設定」です。
たとえば、東京ディズニーリゾートの入園料は《30年で約2.5倍》まで値上げされています(参考: ITmedia ビジネスオンライン)。
良質なブランドイメージを保有し、ブランド力の強いブランドは、より高額の価格でも顧客に受け入れられるのです。
ロイヤルティマーケティングは、ただ売上高を上げるだけでなく、利益率を高める効果を持っていることを、押さえておきましょう。
続いて、ロイヤルティマーケティングとは、具体的に何をすることなのか、見ていきましょう。
ここでは、ロイヤルティマーケティング戦略として多くのブランドが採用している、7種類の施策をご紹介します。
1.ロイヤルティプログラム(リワードプログラム)
2.ファンコミュニティ
3.カスタマーエクスペリエンス(顧客体験・CX)
4.リファラルプログラム(紹介制度)
5.アンバサダープログラム
6.UGCマーケティング
7.他社とのパートナーシップ
「自社ブランドや顧客と好相性の戦略はどれか?」と推し測りながら、読み進めていただければと思います。
1つめの戦略️は「ロイヤルティプログラム(リワードプログラム)」です。
※狭義では「ロイヤルティマーケティング=ロイヤルティプログラム」と解説されることもあるため、最初に取り上げます。
ロイヤルティプログラムは、すべての顧客を平等に扱うのではなく、ロイヤルカスタマーを優遇することで、感謝を表現したり顧客の購買意欲を促進したりする戦略です。
簡単にいえば「顧客が継続するほどおトクになる制度」であり、原始的には、来店のたびにスタンプを押す「スタンプカード」もロイヤルティプログラムといえます。
さまざまなブランドが、ロイヤルティプログラムを展開しています。
【ロイヤルティプログラムの例】
・スターバックス:Starbucks Rewards
・JAL:JALマイレージバンク
・ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ:Hilton Honors
自社にターゲット層が近いブランドや競合他社を参考にしながら、設計を進めてみましょう。
2つめの戦略️は「ファンコミュニティ」です。
ファンコミュニティとは、ブランドのファン同士が集い、ファンとしての気持ちを共有し合ったり、同じ価値観を持つ者同士でつながったりする場のことです。
コミュニティを通じた連帯感や、コミュニティ内だけで得られる限定感は、顧客ロイヤルティを強力に深める効果があります。
【ファンコミュニティの例】
出典:&KAGOME
上記のカゴメの例のように、自社運営でコミュニティサイトを立ち上げ、顧客ロイヤルティの醸成を図るブランドが増えています。
SNSなどで自然発生的に生じるコミュニティとは別に、ブランドによる直接運営でコミュニティをマネジメントすれば、より効果的に顧客ロイヤルティを醸成できます。
ファンコミュニティについて詳しくは「ファンコミュニティとは?わかりやすい基本と事例・5つの重要ポイント」にて解説していますので、ご確認ください。
3つめの戦略️は「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験・CX)」です。
CXは、顧客ロイヤルティにダイレクトに影響するため、向上の施策が欠かせません。
顧客の心をつかむサービス体験を提供し、期待値を大きく超えることで、顧客ロイヤルティが生まれます。
【取り組みの例】
・事前の期待値を大きく超える満足度の実現
・顧客が体験したことのない新しいサービスの提供
・うれしいサプライズ(誕生日、記念日など)
・顧客一人ひとりに対する個別対応(パーソナライズ)
体系的にCX向上に取り組むためには、「カスタマージャーニーマップ」を作成する手法が有効です。
カスタマージャーニーとは、顧客がブランドと出会ってから、さまざまな体験をしていく一連のプロセスを「旅」になぞらえて、時系列でとらえる概念です。
カスタマージャーニーマップは、カスタマージャーニーをわかりやすく可視化したものとなります。
【カスタマージャーニーマップのフレーム】
出典:カスタマージャーニーとは?概要から作り方まで徹底解説!
タッチポイント(顧客接点)ごとの顧客の行動・思考・感情を明確化し、それに対応するブランドの施策を検討します。
詳しい手順は「カスタマージャーニーとは?概要から作り方まで徹底解説!」にて解説していますので、確認のうえ、作成を進めていきましょう。
4つめの戦略️は「リファラルプログラム(紹介制度)」です。
リファラルプログラムは、「お友だち紹介制度」などの名称で運用されていることの多い仕組みです。既存顧客(紹介する人)と、新規顧客(紹介を受ける人)の双方にインセンティブを準備します。
【参考:実際のリファラルプログラムの例
⇒ お友達紹介制度(ていねい通販)
リファラルプログラムがあることで、既存顧客は周囲にブランドを紹介するきっかけを得られます。
ブランドにとっては新規顧客の獲得を推進できるのはもちろんですが、紹介を行う既存顧客のロイヤルティを深化させることにもつながります。ブランドの良さや自分の体験を身近な人に語り、推奨すると、ブランドに対する愛着や帰属意識が深まるためです。
5つめの戦略️は「アンバサダープログラム」です。
アンバサダープログラムは、既存顧客などを「アンバサダー(大使)」として任命し、ブランドの価値を伝える活動を行ってもらう施策です。
前述のリファラルプログラムよりも深くブランドに関与するため、アンバサダーとブランドとの関係性は、より強固になります。
アンバサダーとしての活動は、ブランドとの共同体感をもたらし、自分もブランドの一員のように感じさせるものです。
アンバサダープログラムの詳細は「アンバサダープログラム」にて、解説しています。あわせてご覧ください。
6つめの戦略️は「UGCマーケティング」です。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)を増やす試みは、ロイヤルティマーケティングの一環としても、よく採用されます。
UGCは、ブランドが通常の接点では到達し得ない、顧客のプライベートや個人的な感情とブランドを結び付ける媒体として機能するからです。
たとえば、SNSにおける顧客自身の写真や動画、家族やパートナー、プライベートな仲間とのやり取りと、ブランドが同列に存在することになります。
UGCに、いいねなどのリアクションがついたり、ほかのユーザーから褒められたり、誰かが自分の真似をして購入したり——、といった体験があれば、顧客ロイヤルティは非常に強くなります。
ブランドを好きな気持ちを他者から承認されることで、自信が得られるからです。
UGCマーケティングの詳細は「UGCマーケティング」にて、解説しています。あわせてご覧ください。
7つめの戦略️は「他社とのパートナーシップ」です。
これは、ターゲットの顧客層が重複する他業のブランドと協力することで、ともに顧客ロイヤルティを高める手法です。
“ターゲットの顧客層が重複する他業のブランド”とは、たとえば以下のようなものです。
・旅行会社
・航空会社
・レンタカー社
・ホテル
これらの会社が連携し、良質なCXやロイヤルティプログラムを共創すれば、包括的に顧客ロイヤルティを向上できます。
【パートナーシップの例】
・コーヒー豆 × コーヒーフィルター
・動物病院 × ペットフード
・美容室 × ヘアケア用品
・創業支援 × コーポレートサイト構築
・カフェ × 本屋
自社ブランドと、共通する顧客を持つ他業ブランドは何か、洗い出すところから始めてみましょう。
最後に、ロイヤルティマーケティングを成功させるために大切な考え方をお伝えします。
ロイヤルティマーケティングで可視的な成果を挙げるためには、各プログラムなどの施策設計が重要です。
しかし、ただ報酬を付与すれば顧客ロイヤルティが高まるというような、単純な話ではないことを念頭におきましょう。ロイヤルティマーケティングで扱うのは「顧客の気持ち」です。
ブランドが顧客に愛されるために必要なのは、「顧客を大切にすること」にほかなりません。
ロイヤルティプログラムなどの制度は、顧客を大切にする態度を表す手段として設計されるべきといえます。
それがなければ、どんなにおトクな制度を作ったとしても、おトクが好きなユーザーが集まってくるだけで、本当の顧客ロイヤルティは醸成されないのです。
“顧客を大切にする”というと抽象的な表現ですが、どう大切にするか?こそ、ブランドらしさの見せどころです。
本記事では、思考のヒントになるようにいくつかの具体策をご紹介しましたが、その範疇に収まる必要はまったくありません。
ロイヤルカスタマーが、
「やっぱり、○○ブランドらしいよね」
と言ってくれるような方法で、顧客を大切にするやり方を考えてみてください。
2020年代以降の顧客ロイヤルティを考えるときには、「コミュニティの力」に着目しましょう。
《ブランド ⇔ 顧客》のつながりだけでなく、《顧客 ⇔ 顧客》のつながりが構築されてこそ、顧客ロイヤルティは加速度的に深まっていきます。
コミュニティがあれば、顧客たちは困りごとや疑問を、お互いに解決できます。今までは知らなかった、商品・サービスの使い方や工夫を知って、さらに満足度が高まる場面もあるでしょう。
そして、「コミュニティ自体に対する愛着」が醸成されることで、顧客はより強くブランドと結びつくことになります。
コミュニティ構築については、こちらのページに資料をそろえていますので、ダウンロードしてご活用ください。
本記事では「ロイヤルティマーケティング」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
ロイヤルティマーケティングによって期待できる効果として、以下が挙げられます。
1.リテンションレート(顧客維持率)の向上
2.顧客獲得コスト(CAC)の改善
3.客単価の向上
4.ブランドイメージの強化
ロイヤルティマーケティング戦略として、7種類をご紹介しました。
1.ロイヤルティプログラム(リワードプログラム)
2.ファンコミュニティ
3.カスタマーエクスペリエンス(顧客体験・CX)
4.リファラルプログラム(紹介制度)
5.アンバサダープログラム
6.UGCマーケティング
7.他社とのパートナーシップ
ロイヤルティマーケティングの取り組みを通じて、顧客と建設的な関係を築き、さらなる価値を創造していきましょう。
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