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【イベントレポート】カルビー株式会社『カルビーに学ぶ 愛されるブランドづくりとは? ファンと対話し共創する商品戦略の裏側』

※この記事は、2023年2月15日に開催した、ウェビナー「カルビーに学ぶ 愛されるブランドづくりとは? ファンと対話し共創する商品戦略の裏側」の様子をまとめております。

登壇者情報

目次



カルビーに学ぶ 愛されるブランドづくりとは?ファンと対話し共創する商品戦略の裏側

カルビー株式会社 小垰 勇人氏(以下、小垰):カルビーのかっぱえびせんチームでマーケティングを担当しております小垰です。

初めにハードルを下げさせていただきたいのですが、私はまだまだコミュニティ運営を探り探り進めているひよっこレベルのブランド担当者です。こんな素人の担当者でもコミューンさんのシステムを使えばコミュニティ運営をできるということをお伝えできれば幸いです。

私の簡単な自己紹介をさせていただきますと、新卒で飲料メーカーに入社し、量販店の営業、野菜ジュースの販売促進・広告宣伝を担当していました。その後カルビーのマーケティング本部に転職し、かっぱえびせんのブランド担当をしています。

カルビーでは販売促進や広告宣伝など部署が分れておらずブランド担当はブランドに関わることを全部やるので、SNSもコミュニティも素人という状態からスタートしました。

小垰:カルビーの企業理念は、「私たちは、自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしに貢献します。」です。

グループビジョンは、顧客・取引先を大切にして、次に従業員・その家族、そしてコミュニティ、最後に株主に尊敬され、賞賛され、愛される会社になるということを考えている会社です。

小垰:こちらはカルビーの創立からのブランドの経緯なのですが、1949年にカルビーが創立し、1955年にかっぱえびせんの元祖になる「かっぱあられ」を販売開始しました。これを改良して、えびを練り込んだかっぱえびせんができました。その後、ポテトチップス、じゃがりこ、フルグラといった大きいブランドが立ち上がりました。

カルビーはスナック菓子・シリアルのロングセラーが多くあり、かっぱえびせんは今年59歳です。ロングセラーがここまで支持されるのは、お客様がついてきてくださっているからです。

認知率が高くても課題は山積み

小垰:ここで問題です。「かっぱえびせん = 99」とはなんでしょう?

小垰:正解は認知率です。前職で飲料を担当していたときにも認知率99%という数字を見たことはありませんでした。この数字はすごいのですが課題もありました。

森岡毅さんの著書「確率思考の戦略論」では、ブランドが成功する為には、認知・配荷・選好性(プリファレンス)の掛け合わせが一番の近道と書いてあるのですが、かっぱえびせんは99%の認知でいわゆる誰もが知っているブランドですし、お店に行ってもほとんどのお店で並んでいるので配荷も大丈夫そう。では、選好性はどうなのかを考えると、指名買いされているか、値上げしても買ってもらえるのか、日常で話題になっているのか、購入することで自分らしくいられるのかというところに疑問があり課題感を持っていました。また、価格競争に巻き込まれている状態で、ディスカウントストアで安く売られていることもありました。

ターゲットを明確にした絶品かっぱえびせんシリーズ

小垰:そこで、2020年の4月に「“あなたの特別なお酒の時間”を充実させるかっぱえびせん」というコンセプトで絶品かっぱえびせんシリーズを立ち上げました。

カルビーでは年代でターゲットを区切るのはご法度だったのですが、今回のターゲットは「お酒が大好きなイケオジ」にしています。イケオジとはイケメンのオジ様ではなく、「お酒のために日々仕事を頑張っている愛らしい方」で、スライド右側のポスターにあるようなオジ様方です。この方々に買っていただければ良いと思っており、ターゲットを鋭く決めたことがこのブランドの成功の一因だったのかなと思います。

通常のかっぱえびせんは細長いのですが、絶品シリーズは大きめでえびの含有量も高く、ビールと合うように堅めの食感でお酒が引き立ついろんな地域の塩を使っています。

コミュニティ 絶品部 やめられないとまらない課

小垰:酒と絶品かっぱえびせんをこよなく愛するイケオジ達が集うファンとの新部署、「絶品部 やめられないとまらない課」というコミュニティを作りました

絶品部に入ると、コンテンツに対し、いいねやコメント、投稿ができます。更に、いいねやコメントなどのアクションによってポイントが貯まり、役職が変わるオンライン名刺を用意しています。他にも、メンバー限定のイベントを不定期で開催しています。

オンライン飲み会ではビールを片手に乾杯から始まり、企業とファンという立場が一切ないコミュニティです。気になる方はぜひコミュニティに登録していただいて中を見ていただければと思います。

https://zeppinbu.jp

小垰:コミュニティの導線は、かっぱえびせんのブランドサイト、絶品かっぱえびせんのブランドサイトに加え、今回新しく商品のパッケージの裏面に絶品部の紹介を載せています。他は企業のSNS、かっぱえびせんのTwitter、カルビーのルビープログラムでも誘導しています。

熱狂的なファン生の声からコミュニティを検討

小垰:コミュニティを始めるきっかけはなんだったの?とよく聞かれるのですが、最初はお客様相談室にお電話をいただいた熱狂的なファンの方の声でした。

通常スナックは袋で買うことが多くケースで買うものではないのですが、絶品かっぱえびせんに関しては箱買いをする方が多かったり、お店にある商品を全部買ってきた方がいたり、空き袋を片手にお店を30店舗回って「これないですか?」と探し回った方もいました。

また、当初絶品かっぱえびせんはコンビニ限定、期間限定で店頭からなくなったらしばらくは入荷しない商品でした。店頭復活のタイミングでお客様相談室からファンの方に連絡させていただいたところ、とても喜んでいただき、バスと電車を乗り継いで商品を探しに行ってくださるほど熱狂的なファンがいるということがわかったのがステップ1でした。

小垰:コミュニティを始めるきっかけはもう1つあります。メーカーはよく消費者調査を実施するのですが、調査慣れしている人もいて本音で話しているのかな?と懐疑的に思い、調査の最後に「食べているところの写真をください」と依頼してみました。ダメ元だったのですが、満面の笑みのイケオジがビールと絶品かっぱえびせんと映っている写真がたくさん届き、ターゲットが間違っていなかったとわかりました。許可をいただいてその写真を販促や商談資料などで使わせていただきました。

カルビーの中ではお客様が見えるブランドというのはあまりなかったので、角度の違うマーケティングができたのかなと思います。

小垰:ファンマーケティングで有名なヤッホーブルーイングの佐藤さんとお話しする機会があり、絶品かっぱえびせんの取り組みをお伝えしたところ、「とても良いですね。でもこのファンの人たちには直接会いましたか?ファンの方に会うのは百利あって一害なしだよ」と言われて衝撃を受けました。ファンと会って直接会話をして、一緒に取り組んで最終的に応援もされているヤッホーブルーイングというブランドや佐藤さんが羨ましい!と思い、自分達の取り組みを少し恥ずかしく感じました。

しかし、イケオジとコミュニケーションが取れる適切な場について悩みました。SNSで対象を見つけられたとしても、SNS上では話しにくいこともあるかもしれないと思っている時に、たまたまコミューンさんのTVCMが流れて問い合わせし、導入に至りました。

熱狂的なファンと対話できる場はコミュニティ

小垰:コミュニティでなければならなかった理由は、熱狂的なファンと顔を付き合わせて直接対話をしたいということと、ブランドとお客様の深いキャッチボールができる「場」を作りたいというのがありました。

新商品が出ましたというお知らせはSNSで良いのですが、「商品は実際どうですか?」「パッケージはどちらが良いですか?」といった、もっと深い会話ができるのはコミュニティだと思い、commmuneを導入しました。

小垰:企業と消費者が同じ立場で話せる場所はなかなかないので、コミュニティは貴重な場です。コミュニティでは、同じ立場の仲間、同志という関係性でいられたらとても良いなと思っています。

また、ファンと企業で相互利益があると思っており、ファンの方にはコミュニティでコンテンツを提供することで楽しんでいただき、私たちはお客様視点でのブランドの発見を提供しています。最終的にはお客様と共創した商品を作ってPRしていきたいです。

お客様にコミュニティで楽しんでいただくのが一番嬉しいのですが、更に口コミでコミュニティの外に広がる可能性もあると思っています。

コミュニティが商品開発や営業に活きる

小垰:コミュニティを始めて良かったことは、新商品の感想だけでなく、何が良かったのかという普段聞きづらいことやヒントになることを忖度なく教えてもらえるところです。

また、今はメーカーの1商品の細かいこだわりに興味を持ってもらえる時代ではないと思うのですが、絶品部のみなさんは、絶品かっぱえびせんやかっぱえびせんの情報を親身になって聴き、共感してくれるというのも良いところです。

ファンの方との初めてのオンライン飲み会では、イケオジと何を話せば良いのか緊張しながら始まったのですが、熱狂的なファンと直接話して熱量に感動し、私たちのモチベーションも上がりました

ファンの方と直接話したり、美味しいと言ってもらえるのはブランド担当者として一番嬉しいですし、そのような機会は通常業務ではなかなかないので貴重な機会でした。

今後は、絶品部での活動内容によって商談の説得力を増したり、お客様の見える化を進めていきたいです。例えば、今回絶品かっぱえびせんは新商品なので、リピートはどうなのか?というシビアな判断をされるので、根強いファンがいるという裏付けとしてコミュニティが下支えになってくれれば良いなと思っています。

パネルディスカッション

コミューン株式会社 須藤 美幸(以下、須藤):コミュニティの運営体制について教えてください。

小垰:かっぱえびせんチームはブランド担当者3名ですが、コミュニティの専任担当はいません。コミュニティでは通常の投稿のほかにもアンケートや、新商品共創プロジェクトやイベントの立案などをしています。

コミューンさんは戦略パートナーと表現しているのですが、コミュニティの戦略立案からアドバイス、運用サポートもしっかりしていただけるので、素人の私でもサポートのおかげで運用できています。どんなイベントを開催しようかということも相談に乗っていただいています。

須藤:コミュニティの場はブランドの成長にどのような影響を与えていますか?

小垰:先ほどお話ししたお客様との商品共創プロジェクトを実施しています。2023年度発売予定の商品をお客様と一緒に作りましょうという企画です。

コミュニティを立ち上げる前に、アンケートでコミュニティに期待することを聞いたところ、商品の共創という意見が一番多くありました。実際にコミュニティ内で味を募集したところ50もの案が出てきて、そこからコンセプトと塩の相性などから社内で4案に絞り、絶品部内のオンライン投票で2案に絞りました。今後はオンライン試食会を実施し、社内で製品化を進めていきます。


質疑応答

須藤:ブランドサイト、SNS、コミュニティーの使い分けに対しての考え方をお聞きしたいです。

小垰:ブランドサイトは企業の一番のベースなので、あくまで受け皿の位置付けです。お客様を誘導するのではなく、ここにくればブランドを理解してもらえることを目的にブランドサイトを作っています

SNSに関しては、特にTwitterはフォロワー数もシビアに見ています。かっぱえびせんを日常に感じていただける機会はなかなかないので、SNSではどれだけ多くのお客様に知っていただけるかという拡散力に期待しています。

一方で、コミュニティの目標登録者は目標にしていません。極端な話、1000人の登録者よりも、100人の熱狂的なファンの方が良いと判断し、それぞれのチャネルを目的ごとに使い分けています。

須藤:コミュニティのKPI指標はどこにおいていますか。

小垰:人数というよりも、熱量が高い人がどれくらいいるのかに注目しています。具体的な数字は出せないのですが、登録した方がどれくらいの頻度で絶品部に来ていただけているか、どれだけアクションしていただけているのか、アクションを多くしてくださるパワーユーザー(継続的にコミュニティに訪れる人やアクションしてくれる人)はどれくらいいるのか、というのをKPIとしています。

須藤:コミュニティの参加はどこからの流入が一番多いですか?

小垰:コミュニティは商品からの流入が一番多いです。カルビーは実はあまり広告を打たない会社で、まさに商品自体が一番の広告になっています。今回その商品で絶品部の紹介をしているので今後更なる流入が見込まれると思います。

須藤:最後に、今後の展望を教えていただけますか?

小垰:コミュニティ内で、直接お客様と話したり商品を作っていけるのはそれだけでありがたいのですが、これからはファンの方により喜んでもらえるコンテンツを用意し、パワーユーザーをさらに増やしていきたいです。そしてお客様により喜んでもらえるカルビーの新部署になっていけば良いなと思います。



お話を聞かせていただいた小垰さん、ありがとうございました!

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