カスタマーサクセスにおいて最も効果を上げるためには、一人一人の顧客に担当者が張り付いて支援することが一番でしょう。
しかし、人的リソースには限りがあり、顧客数が増えるにつれて全ての顧客に丁寧な支援を届けることは難しくなります。
こうした「ユーザー数が増加しても、手厚いサポートを施したい」という悩みは、多くのカスタマーサクセスマネージャーが抱えているのではないでしょうか。
そのために重要なのが、少ないリソースや工数でより大きな成果をあげる”スケーラブル”なカスタマーサクセス組織の構築です。 本記事では、スケーラブルなカスタマーサクセス組織を構築する手法を丁寧に解説いたします!
事業が成長するにつれて、プロダクトや機能のラインナップは拡張され、顧客数も増加していくでしょう。そのようなタイミングに差し掛かったカスタマーサクセス組織で発生するのが、スケーラビリティの問題です。
以下のような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
・現在のCS活動は、
・コミュニケーションチャネルは電話やチャットサポートがメインで、何度も同じやりとりが発生し工数負担が大きい
・労働集約的なフォローには限界があり、今後顧客数が増加していく中で、CS体制が追いつかなくなる
特に、ユーザー数の多いC向けのサービスや活用難易度の高いB向けのサービスでは、よく見られる傾向にあります。
一般的にカスタマーサクセスは、人力で1対1のコミュニケーションを行い顧客ごとに個別最適化されたサポートをすれば、顧客は成功し
一方で、ある程度汎用化され効率的なロータッチのサポートや、人の手を介さないテックタッチのサポートを行えば、サポート範囲は広げられますが、その分成果が出づらくなります。
つまり、効果が大きい取り組みは工数がかかり過ぎるが、幅広い顧客に提供できる取り組みは効果が薄い、というジレンマが生じるのです。これがカスタマーサクセスの”解けないパズル”です。
ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチとは
カスタマーサクセスでは、顧客を
LTV によって分類しそれぞれに最適なアプローチを行うことが一般的です。全ての顧客に手厚い対応ができるならそれに越したことはありませんが、コストや人的リソースには限りがあります。一方で、効率性を重視し全ての顧客への対応を画一的にすれば
チャーン リスクが高くなり効果が上がらなくなります。顧客をセグメントに切り分け対応を変えることで、限られたリソースを効率的に活用した費用対効果の高い対応が取れるのです。
・ハイタッチ:最も
LTV が高い層。手厚いリソースを確保し、時には個別最適化されたサポートを行いながらエンゲージメントを高めていく必要がある。・ロータッチ:ハイタッチほどではないが
LTV が高い層。直接的な接点は持ちつつ、ハイタッチ層への取り組みで得られた知見を汎用化した効率的なサポートが求められる。LTV が高い層。直接的な接点は持ちつつ、ハイタッチ層への取り組みで得られた知見を汎用化した効率的なサポートが求められる。・テックタッチ:
LTV が低い層。人の手を介さないサポートも含めた効率的なアプローチが必要となる。
- ▼「タッチモデル」についてはこちらの記事で詳しく解説しております
コミュニティタッチとは?カスタマーサクセスを実現するハイタッチ、ロータッチ、テックタッチを横断する「4つ目のタッチ」
事業を成長させるためには、”解けないパズル”に挑み、効率性と成果の両取りを目指さなくてはなりません。その際、まず抑えなくてはならないのは「顧客には自走してもらうべき」ということです。
日本では既存営業の延長線上としてカスタマーサクセスを捉えることが多く、ハイタッチサポートに偏重しがちです。「顧客に寄り添う」というマインドセットが受け入れられやすいためか、時には、収益を度外視した顧客第一のスタンスが是とされる場合もあります。
しかし、顧客の成果創出がハイタッチサポートに依存したままでは、いつまでたっても自社のサポートコストは減りません。やがて顧客数が増えサポートの手が回りきらなくなれば、その顧客は
例えるなら、レストランにおけるシェフとお客様のような関係になってはいけないということです。席に座るだけで美味しい料理が目の前に運ばれてくる状態に慣れてしまうと、もし料理のクオリティが低下してしまったら、お客様はすぐに店を変えてしまうでしょう。
これはお客様にとってもレストランにとっても望ましい状態ではありません。
お客様は、おいしい料理を食べるためには高い料金を払わなければなりません。一方で、お店は、売り上げを拡大しようと思っても、シェフの人的リソースがボトルネックになってしまいます。
そうではなく、料理教室における先生と生徒のような関係を目指すべきです。生徒が自分で料理を作れるようになれば、食べたい時に食べたい料理を食べられるようになります。先生はスキルを教えるだけで良いので、自分で作るより遥かに多くの人に美味しい料理を届けることができます。
カスタマーサクセスはボランティアではありません。だからこそ、顧客の成功がきちんと自社の成功につながるよう、顧客には自走してもらうべきなのです。
スケーラブルなCS体制を確立するためにまず必要なのが、基盤を整えることです。そのために最も重要なのが、個々のCSMのサポートクオリティを仕組みとして担保することです。
顧客対応が属人化してしまうと、人員を増やすことが必ずしも事業成長に直結するとは限らなくなります。むしろ、社内のコミュニケーションコストやマネジメントコストがかさんだり、顧客対応で不備が発生し信頼を失ってしまったりと、マイナスの事態が発生してしまう可能性もあるでしょう。
個人の成果に再現性を持たせ、新しく参加するメンバーがスムーズに
そのためには、
(1)CSM組織における行動原則を定める
(2)
(3)ナレッジをシェアできるような業務サイクルを設計する
といった施策は有効です。
※例:
(3)に関しては、より具体的に、
・打ち合わせは、必ず事前にアジェンダを作成し、議事録を取る
・これらを全員が確認できるようにする
・用途やケースにおける解決方法、提案における価値の出し方などはストックしておく
といったやり方があるでしょう。
注意しなければならないのは、安易なマニュアル化には走らないということです。再現性を持たせるために支援クオリティを下げてしまうのは、中長期的に見れば悪手でしょう。
標準化する基準を見定めるためにも、初期は徹底的に手厚いサポートを施し、顧客理解とサクセスプロセスの見極めに努めるべきです。”あえてスケールしないことをする”ことが、その後のスケールにつながるのです。
スケーラブルなCS体制を確立するためには、役割ごとに専門性を持ったチームが稼働できる体制を構築することも大切です。
CSMの役割が多岐にわたる状態だと、多方面においてスキルが求められることになり、その人しかできない仕事が発生し属人化の原因になります。作業効率も悪くなるので、パフォーマンスも最大化されないでしょう。組織として、人的リソースを最大限に有効活用できなくなります。
また、業務内容のカバー範囲が広くなるほど、適した人材を採用することも難しくなるでしょう。新しく参加したメンバーの戦力化も遅れることになります。
特に立ち上がったばかりの組織だと、CSMが何でも屋として活動することが多いと思います。しかし、現メンバーの成果を最大化し、後の採用をスムーズに進めるためには、早期から役割によってチームを分け専門性が発揮できる構造を心がけるべきでしょう。
特に、エースメンバーはレバレッジの効く仕事にフォーカスするべきです。「1年後にこの仕事を続けていても大丈夫か?」と問いかけ「NO」であるなら、早いうちから手を打つことが吉です。
チーム作りに関しては、「専任を置くべきか」と「既に取り組んでいるか」の2軸で考えると良いでしょう。
カスタマーサクセス組織において、主に必要とされる役職は以下の通りです。
(1)CS Ops
役割:フロントで顧客と折衝するわけではないが、CS組織を強化するための仕組みを構築・改善する
主な業務内容:ツールの導入/活用、顧客レポートの作成、
必要とされるタイミング:現場のCSMがOpsの役割を兼任することは困難なので、顧客解像度が高くなりサクセスまでのデリバリー方法が見えてきたら速やかに設置するのがおすすめ
(2)カスタマーマーケティング
役割:既存顧客とのコミュニケーションを大規模に行い、サービスの利活用の促進・拡大を推進する
主な業務内容:チュートリアルの作成、顧客の課題に即したコンテンツの企画制作、FAQページの作成、充実
必要とされるタイミング:
カスタマーサクセス組織において、一般的に検討すべき機能項目については、
1年後の組織の姿をイメージすることで、現在地点とのギャップが明らかになり、どのチームを立ち上げる・強化するべきか道筋が見えるようになるでしょう。
前述した通り、顧客が自走できるようハイタッチ依存の度合いを弱めていくことが重要です。そのためには、セルフサーブを強化することが有効です。
セルフサーブとは、顧客が疑問や質問・課題を抱いた時に、企業に問い合わせることなく自力で解決することです。具体的には、ヘルプページや使用方法の動画を参照したり、ナレッジベースにアクセスしたり、あるいは顧客同士で質問・アドバイスしあったり、といった形です。
セルフサーブを強化することで、問い合わせ対応や使用方法の案内といった”守り”の業務を減らし、より本質的な価値を提供する”攻め”の業務に集中することができます。
また、顧客の満足度向上にもつながるでしょう。顧客は、課題解決時に「いかにエフォートレスであったか」を重視します。そのため、わざわざ電話をかけるよりも、ヘルプページで解決できる方が望まれているのです。
丁寧なおもてなしよりも、簡潔でわかりやすい方が満足度向上に寄与すると言えます。
顧客コミュニティは、お客様の対応工数を削減し、スケーラブルなカスタマーサクセスの実現に効果的です。さらには
顧客コミュニティ
企業・組織が「特定の目的」を持って構築・管理・運用するコミュニティ。商品・サービスの利用者が所属しており、企業側が目的に沿ったコミュニケーションルールを設計し、ユーザーはその範囲内で発信・議論を行う。
顧客コミュニティによってカスタマーサクセスがスケールする理由を3つご紹介します。
(1)ユーザー同士がつながり相互支援が生まれることで、サポート工数が削減される
コミュニティでは、ユーザー同士で質問・疑問を投げ合うことが可能です。ユーザー同士で問題が完結するので、サポート工数を削減することができます。
また、ユーザー同士の交流はサポートクオリティの向上にもつながります。最もユーザー目線で回答できるのはユーザーです。現場感のあるリアルで実務的な情報は、ユーザーにとって非常に価値があるでしょう。
(2)タッチポイントが集約される&情報が蓄積されることで、何度も同じやりとりをせずに済む
顧客とのコミュニケーション手段を多数用意している企業は多いでしょう。打ち合わせはWeb通話、お問い合わせはサポートチームに電話、新機能のお知らせはメルマガ、プロダクトへのフィードバックは個別のチャットツール、といった具合です。
このようにタッチポイントが複数存在すると、同じ内容のやりとりをユーザーごとに何度もしなければなりません。接点を維持することも難しくなるので、都度最適なアプローチを探さなければならないというケースも出てくるでしょう。
情報量の差やタイムラグも見過ごせず、そもそも情報が届いているのかもわからなくなります。フロー型でコンテンツも流れてしまうので、コンテンツ価値も最大化されません。
顧客コミュニティであれば、【チャネルの分断→集約】、【フロー型→ストック型】にすることが可能で、顧客コミュニケーションの効率を引き上げます。
(3)ユーザーのニーズや課題が顕在化することで、施策スピードや効果が向上する
メルマガやプッシュ通知に代表されるように、既存顧客とのコミュニケーションは、基本的に企業から顧客へと一方通行であることが一般的です。
この形では、顧客の声を継続的に聞いたり、インサイトを把握したりすることは困難でしょう。
顧客コミュニティであれば、ユーザー自身が意見や悩みを投稿してくれたり、ユーザー同士の自然な会話が発生したりするので、ニーズや課題を収集することが非常に簡単になります。外部のマーケティング会社を利用したり大々的な調査設計をする必要がないため、結果として、施策のスピードや効果が向上します。
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