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CAC(顧客獲得単価)とは? LTVやユニットエコノミクスとの関係性を徹底解説!- 0からわかるカスタマーサクセス用語集

CAC(顧客獲得単価)

SaaSビジネスを評価する指標はたくさんありますが、その中でも健全性を測る指標として重要視されているのがCACです。
特にユニットエコノミクスとの関係で語られることが多いでしょう。CACを算出することで、スタートアップ経営でマイルストーンとされることの多い、ユニットエコノミクスを求められるようになるのです。
本記事では、CACを事業で使いこなせるよう、概要から他の指標との違い、目標となる水準や注意点まで、詳細に解説したいと思います。

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CACとは?

CACとは「Customer(顧客) Acquisition(獲得) Cost(費用)」を略したもので、顧客1人/1社を獲得するために費やしたコストのことです。日本語ではそのまま「顧客獲得単価」と訳されます。
企業は、顧客を得るために広告費や営業人件費など様々なコストをかけていますが、このようなコストをまとめてCACと呼びます。

CACは1か月/3ヶ月(四半期)/1年など目的に応じた期間を定めて、「その期間で顧客を獲得するために投資した金額の合計」を「獲得した顧客の数で割る」ことによって算出します。計算式は以下の通りです。

CAC = 顧客を獲得するために費やしたコスト ÷ 新規顧客獲得数

例えば、とある月にマーケティング・営業コストとして100万円をかけ、その月に100名(100社)の新規顧客を獲得した場合、その月のCACは1万円となります。

CPAとの違い

CACに似たメトリクスで、CPAというものがあります。
CPAは「Cost(費用) Per(ごとの) Acquisition(獲得)」の略で、意味はCACと同じ”顧客1人/1社を獲得するために費やしたコスト”になります。しかし、コストの範囲に違いがあります。 

CPAは主に顧客1人/1社あたりの広告費を表す一方で、CACは広告費に限らず人件費や運用コストなど、あらゆるコストを加味します。ソーシャルメディアや検索エンジン、コンテンツマーケティング、営業、展示会など、オンライン/オフライン問わず、顧客を新規に獲得するためのチャネル全てが対象になります。
そのため、CACはプロジェクト単位などの粒度で用いることが多いですが、CPAは施策単位の粒度がメインになります。特に、インターネット広告の分野で、1コンバージョンを得るために費やした広告費を測定するために用いられることが多いです。

CACとCPAの違い

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CACには3種類存在する 

CACを扱う際には気をつけるべきことがあります。それは、新規で獲得した顧客の中には、その期間に実施したプロモーション活動の結果ではなく、既存顧客からの紹介や口コミ、検索といった経路で自然流入する顧客が含まれていることです。

ある期間に実施した広告やキャンペーンの費用対効果を正しく測ろうとする場合、全体の新規顧客獲得数から自然流入した顧客を除く必要があります。そのため、CACは、獲得した顧客の経路によってコストを分けて考えます。 

①Organic CAC

非有料チャネルでの顧客獲得コストのことです。
既存顧客からの紹介や口コミ、検索からの流入などは、Organic CACに分類されます。

顧客は必ずしも広告やキャンペーンで増えるわけではなく、意図しない経路から自然に増えることもあります。
CACを計算する場合、自然流入した顧客の獲得コストは見落とされがちですが、Organic CACを考慮に入れないと正しいCACが測定できないため注意が必要です。

②Paid CAC

有料チャネルでの顧客獲得コストのことです。
テレビ/タクシーCMやインターネット広告などはもちろん、外部イベントへの参加や自社イベントの開催など、顧客獲得の意図を持った施策すべての費用を含みます。

 オーガニックでの顧客獲得も想定して事業を進めると思いますが、マーケティングや営業の顧客獲得効率を議論する際は、施策の影響度が見えやすいPaid CACを指標に置くことをお勧めします。

③Blended CAC

Organic CACとPaid CACを合わせた顧客獲得コストのことです。一般的にCACと言う場合、Blended CACを指していると考えてよいでしょう。

「顧客数は増加しているが収益は赤字になっている、引き続き顧客数の増加を追求すべきか、黒字化を優先させるべきか」というような悩みに直面することもあるでしょう。
そのような場合には、CACとしてひとまとまりに考えず、Organic CACとPaid CACに分類することが有効です。CACを種類によって分けて考えることで、Organic CACはそのままにPaid CACは抑える、といったような、状況合わせた柔軟な対応ができるようになります。

3種類のCAC

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CACを計算する最大の目的はユニットエコノミクスの把握

CACを説明する上で必ず登場するのがユニットエコノミクスです。CACはユニットエコノミクスを計算するために求めると言っても過言ではありません

ユニットエコノミクスとは

ユニットエコノミクス(Unit Economics)とは、その名の通り「単位あたりの経済性(儲かっているのか損しているのか)」を表す概念です。何を単位とするかは企業次第で、事業によっては製品や販売ツールの場合もありますが、一般的なのは顧客やアカウントでしょう。
つまり、顧客やアカウントごとに儲かっているのか損しているのかを見るのがユニットエコノミクスというわけです。

ユニットエコノミクスは、「1単位ごとに得られる収益(LTV)」を「その単位を獲得するためにかけたコスト(CAC)」で割ることで求められます。

ユニットエコノミクス=LTV ÷ CAC

 LTVとは、ある顧客が取引を開始してから終えるまでの間に、その企業にもたらした利益の総額を表す指標です。「LIfe Time Value」の略で、直訳すると顧客生涯価値となります。

”Life Time”の名の通り、利益の算出期間が顧客の生涯にわたることが特徴です。SaaSをはじめとするサブスクリプションモデルにおいては、初回の販売で全てのコストを回収できる価格をつけられないため、顧客との関係性を長期に保ち継続的に料金を支払ってもらう必要があります。そのため、顧客から得られる収益を図る際に時間軸を取り入れていることが特徴です。

※LTVに関する詳しい説明は『LTV(顧客生涯価値)とは? - カスタマーサクセス用語集』をご覧ください

ユニットエコノミクスによって、展開している事業の健全性を測ることができます。

ユニットエコノミクスがプラスの場合、収益をあげられる見込みがたつため、そのまま事業を続けたとしても安定した経営を行なっていけると捉えることができます。
反対に、ユニットエコノミクスがマイナスの場合、顧客を獲得するたびに損失を発生させていることになります。事業状態としては不健全かもしれませんが、フェーズによっては収益性を度外視しても顧客獲得を目指すべきという場合もあります。

いずれにせよ、ユニットエコノミクスを見ることによって「事業の収益性は高いのか」「赤字の場合、いつどれくらいまで赤字を受け入れて顧客獲得を続けられるか」などが明らかになります。

LTV/CAC > 3

具体的には、ユニットエコノミクスがどの程度の数値であれば事業状態が健全だと言えるのでしょうか。

 先述の通り、ユニットエコノミクスはLTV/CACで算出できるのですが、この数字が3以上であることが健全な事業運営と呼べる水準と言われています。この水準は、シリーズA(1,000万円〜3,000万円の資金調達)における投資の判断基準の一つとして使われており、SaaS事業者であれば、まず目指すべき数値でしょう。
実際に成功しているSaaSビジネスにおいても、この3以上という水準はクリアしていると言われております。

ちなみに、LTV/CACが3以上であることの根拠が気になる方もいるかもしれませんが、あまり明確になっていません。ただ、「営業利益率を30%以上に保つためには、開発や既存顧客管理にかかるコストを加味し、顧客獲得コストは売り上げに対し30%未満に抑えておく必要がある」と考えれば感覚的には理解できそうです。

LTV/CACの比率が高いことは良いことですが、高すぎても理想的だとは言えません。あまりにもLTVがCACを上回っている場合、顧客獲得のための投資が弱いと捉えられ、グロースする機会を逃していると考えられるからです。

事業を成長させるためには、顧客獲得のために一定以上の投資を行うことが必要です。定期的にユニットエコノミクスを算出し、事業運営の健全性を把握しておくと、柔軟な事業戦略に役立てられます。

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補足:SaaS事業の健全性を判断する3つの指標

SaaS事業において使用される指標はたくさん存在します。LTVやCACもその一つです。これらの指標の中で、一般的に事業の健全性を判断するために重要視されるものが3つあります。

(1)LTVがCACの3倍

まず一つ目は、先述したLTV/CAC > 3です。LTVがCACを上回っていなければ事業として成り立ちませんが、その水準は3以上である必要があります。 

(2)CAC payback periodが12ヶ月以内

CAC payback periodとは顧客獲得コストの回収期間、つまりCACを利益で回収しきるまでにかかる期間のことです。顧客から利益を得られるようになるまでの期間、と捉えても良いかもしれません。

一般に、SaaSのCAC回収期間は12カ月以内が理想とされています。キャッシュフローに影響するので、特にスタートアップにとっては重要な指標です。
仮に資金調達が順調といった場合に18ヶ月以内でも良いとされることもありますが、とにかくこの指標は常に注視することが大事です。 

(3)月間チャーンレートが3%未満

チャーンレートとは「解約率」のことで、契約中の顧客がサービスを解約する割合を示すものです。

SaaSでは、「いかに継続して利用してもらえるか」が事業成長の鍵になります。なぜなら、サービスを導入してもらった時点では契約までにかかったコストを回収できておらず、継続して利用してもらうことで初めて利益が出るからです。
そのため、SaaS企業にとっては、チャーンレートが高いことは「いくら顧客を増やしても全く利益が上がらない」ことを意味しています。チャーンレートは、一般的には1ヶ月当たり3%ぐらいに抑えられれば順調だと言えるでしょう。

※チャーンレートに関する詳しい説明は『チャーンレートとは? - カスタマーサクセス用語集』をご覧ください

上記3つの指標は有機的につながっています。
例えば、「(2)CAC payback periodが12ヶ月以内」「(3)月間チャーンレートが3%未満」を理解することで、「(1)LTV/CAC > 3」の根拠をより精緻に理解することができるようになります。『SaaSの公式「LTV/CAC > 3x」ってなんでなの?分解して考えてみた。』で解説されているので、詳しくはそちらをご覧ください。

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CACはキャズム付近から悪化する

キャズム(chasm)とは、直訳すると「深い溝」という意味で、新たな商品やサービスを市場に浸透させる上で、初期市場とメインストリーム市場の間に存在する大きな隔たりのことを指します。 

キャズムを理解するためには、前提として、スタンフォード大学の社会学者であるエベレット・M・ロジャースが提唱したイノベーター理論を理解しておく必要があります。
イノベーター理論とは、市場の顧客を5つに分けて、新しい商品やサービスの市場浸透を考える理論です。新しい商品やサービスへの反応の早い順に並べると以下の通りです。

・イノベーター(Innovators):革新者

・アーリーアダプター(Early Adopters):初期採用層

・アーリーマジョリティ(Early Majority):前期追随層

・レイトマジョリティ(Late Majority):後期追随層

・ラガード(Laggards):遅滞層

キャズム理論では、イノベーターとアーリーアダプターを初期市場アーリーマジョリティーからラガードをメインストリーム市場とし、両者の間には、市場に製品・サービスを普及させる際に発生する超えるべき障害=キャズムが存在するとしています。

一般的に、アーリーアダプターはリスクに許容的で、企業ブランドに関係なく商品・サービスの質のみで顧客になってくれます。一方で、アーリーマジョリティは、リスクに対する許容度が低くすでに広まっているものを乗り遅れないように取り入れようとする特徴があります。
このように、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には商品・サービスへのニーズに大きな違いがあるため、アーリーアダプターに支持されたからといってアーリーマジョリティに支持される訳ではないと言えるのです。

イノベーター理論とキャズム

CACは、製品が市場に普及していく中で徐々に悪化していく傾向にありますが、具体的にはキャズム付近から悪化すると言われています。

初期市場では、競合も少なく、顧客となる層も流行に敏感で商品やサービスそのものを見て判断してくれるため、そこまで広告費をかけなくても顧客を獲得できます。しかし、メインストリーム市場では、競合も増え、顧客接点のチャネルも増加することから、多くの顧客に商品・サービスの魅力を伝えるために広告やキャンペーン、イベントといった施策の拡大が不可欠になり、CACは悪化していくのです。

・・・

事業を成長させるためには、LTVを最大化させることだけが全てではありません。そのLTVを得るためにどれだけのコストがかかっているのかも同時に意識する必要があります。
スタートアップではLTV/CACが3以上であることが健全な状態と言える水準とされていますが、これを達成するためには、CACを分類し、それぞれに必要な戦略を練ることが大事です。
月・四半期・年と一定期間を定めてCACを計算し、定量的に事業の健全度をはかることがおすすめです。



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自社製品やサービスを支持してくれる「ファン」を商品開発やマーケティングに活かすことでCACを抑えながら事業を拡大することが可能になります。

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