TwitterやYouTubeで紹介されているサービスに興味を持ったり、Instagramで話題になっているスポットに行ってみたくなったり、といった経験がある方も多いのではないでしょうか。
このようにユーザーが発信する情報は、私たちの消費行動に大きな影響を与えています。
一般ユーザーによって生み出されるコンテンツのことをUGCと言います。
モバイルデバイスやSNSの発達によって、今や数えきれないほどのUGCが身の回りに溢れるようになりました。
それに伴いUGCをマーケティングに活かそうという企業も増えています。
今回は、UGCとは何かという点から、UGCを活用するメリット、そして実際に活用する方法までご紹介したいと思います。
UGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)とは、一般の消費者によってつくられたコンテンツのことです。特に、インターネット上でユーザーが生み出した無料のコンテンツのことを指す場合が多いです。
インターネットの普及や携帯端末の機能向上により、2000年頃より、ブログや掲示板といったUGCが見られるようになりました。この頃、企業活動に活用されるUGCは、「商品レビュー」や「お客様の声」など限られたものでした。
しかし、2010年頃から、スマートフォンとSNSが広く普及したことを背景にUGCが爆発的に増加したことで、マーケティング施策に活用されるようになりました。
今では、UGCがECサイトに掲載されたり、UGCを促進するためにハッシュタグキャンペーンが行われたりするなど、企業活動の中で一般的に用いられるようになってきています。
なお、UGCに似た用語としてCGMとIGCがあります。
CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)
CGMは、一般ユーザーからの情報や投稿によって作られるメディアのことを指します。代表例として食べログなどのクチコミサイトなどが挙げられます。
UGCによって成り立っているメディアがCGMです。
マスメディアのように、プロがコンテンツを作るメディアの対比として使われます。
IGC(Influencer Generated Content:インフルエンサー作成コンテンツ)
IGCとは、一般ユーザーではなく、インフルエンサーによって作られたコンテンツのことです。商品を体験した様子や感想など、ソーシャルメディア上ではたくさん見受けられます。
UGCとは違い高いクオリティのコンテンツが提供されやすく、多くの人に影響を与えます。
UGCは日常生活に溢れています。以下に挙げるものは全てUGCであり、誰もが一度は参考にしたり、影響されたり、といった経験があるのではないでしょうか。
・食べログのコメントやレビュー
・ECサイト内の商品コメントやレビュー
・YouTubeでの商品レビュー動画
・掲示板での口コミ投稿
・Q&Aサイトでの投稿
・イラスト投稿サイトでの投稿
・商品・サービスを用いた写真・動画などのSNS投稿
①信頼感や親近感を与えることができる
UGCが企業からの発信と決定的に異なるのは、客観性が担保されているという点です。
企業の発信するコンテンツであれば、どうしても宣伝目的という印象をはらんでしまいますが、UGCは損得勘定を抜きにした消費者目線のリアルなコンテンツです。そのため、消費者はUGCに対して信頼を感じやすいと言えます。
外食する前に口コミサイトを比較したり、ECサイトで購入する前にレビューをチェックしたりする方も多いと思いますが、フラットな意見として信頼できるという意識があるのではないでしょうか。
また、消費者目線のリアルなコンテンツであるため、親近感も湧きやすいと言えます。
例えば洋服であれば、モデルが着用している様子に憧れても、親近感を抱くことは難しいでしょう。対して、自分と体型や生活スタイルが似ている一般消費者が着用している姿であれば、リアリティがあり使用イメージも湧きやすいはずです。そのため、UGCの方が「自分でも着こなせるか」「サイズ感はあっているか」といった疑問や不安は解消されやすくなります。
②商品開発や施策改善のヒントになる
UGCは消費者のリアルな声であるため、何に価値を感じているのか、実際にどのように使用しているのかといった、消費者心理や行動を知る大きなヒントとなります。
そのため、企業にとって商品開発やマーケティング施策に活用できる貴重な資産になるのです。
時には、企業が想定していない使い道で紹介されることもあります。例えば、ブックエンドを冷蔵庫内でペットボトルが転がるのを防ぐために置く、といった使用法は企業は思いつかないのではないでしょうか。
このように、UGCによって新たな発見が生まれることで、企業はこれまでとは異なるプロモーション施策を考えたり、新しい商品開発につなげたりできます。
UGCは、企業にとって改善策に活用できる貴重な資産になるのです。
③コストを抑えられる
UGCは消費者側が作るものなので、企業はコストがかかりません。そのため、UGCを上手に活用することで、クリエイティブ制作にかかる時間やコストを軽減できます。
特にUGCは、前述した通り消費者目線の「見方」や「訴求ポイント」が詰まっており、信頼感や親近感を与えることができる良質なコンテンツです。
こうしたUGCを企業の公式アカウントやWebサイトで発信することで、広告に頼らなくても認知度を高めたり、購入を検討している顧客に効果的にアプローチしたりすることができるのです。
①顧客接点でのコミュニケーションの活発化
店頭での接客、メールマガジン、公式SNSアカウント上でのやり取り、あるいは配送時の梱包までなど、顧客とのあらゆる接点がUGCを発生させるきっかけになります。
そのため、一つ一つの顧客接点でプラス体験を創りだすことが大事です。
加えて、UGCを生成したくなるような仕掛けを用意することも効果的でしょう。例えば、同梱物やメールマガジンで投稿を促す、ユーザー投稿を公式SNSアカウント上で紹介する、といったものです。
②ソーシャルメディア上でのハッシュタグキャンペーン
SNS上で特定のハッシュタグを付けた投稿を促すキャンペーンも、UGCを発生させるきっかけとして有効です。
キャンペーンの企画設計に工夫が必要だったり、インセンティブを用意する、特定のツールを使用するといったコストもかかりますが、短期間で多くのUGCを生成できます。
③インフルエンサー施策
ソーシャルメディア上で影響力を持つインフルエンサーに、商品を体験した様子や感想を投稿してもらうことでUGCの生成を促す手法もあります。
インフルエンサーのフォロワーは基本的にインフルエンサーのファンであるため、紹介された商品に興味を持ちやすく、ポジティブな内容のUGCの発生が期待できるでしょう。
ただし、消費者が求めている情報は、あくまで「企業目線ではないインフルエンサーならでは」の意見です。「企業が押し付けた言葉」や「作られた言葉」といった印象を与えないという点には注意が必要です。
発生しやすい商材
・会話に出やすいモノ
・自己表現しやすいモノ
・物理的に存在しており投稿しやすいモノ
発生しにくい商材
・会話に出にくいモノ
・情緒的な価値が薄いモノ
・手に取る人が少ないモノ
・コンプレックスを抱きやすいモノ
企業のマーケティング活動にUGCを最大限活用するためには、ソーシャルメディアを利用した消費者の購買行動プロセスを理解することが大切です。
ULSSASとは、
ソーシャルメディアマーケティングでは、企業とフォロワーの「1対n」の関係より、ユーザー同士の「n対n」の関係の方が購買行動に大きな影響を与えます。そこで、アテンション獲得にUGCを活用することで、費用対効果の優れたマーケティングを行うことが可能になるのです。
参考:
U: UGC
あるユーザーがSNS上で商品を紹介する投稿をする↓
L: Like
UGCに対しいいねやリツイートなどの反応が起こる↓
S: Search1(SNS検索)
UGCを見たユーザーが、商品についてSNS上で検索をして情報収集をする↓
S: Search2(Google/Yahoo!検索)
さらに詳しい情報を検索エンジンで指名検索する↓
A: Action(購買)
商品を購入する↓
S: Spread(拡散)
商品を紹介する投稿(UGC)をし、その投稿にまたLikeが起こることでULSSASが回り始める
UGCが起点となり、これに「いいね」や「リツイート」といった反応が生まれることで、SNS内での検索、GoogleやYahoo!での検索と続き、購買、拡散と行動が変化していきます。
ULSSASの特徴は、ファネルではなくフライホイールの構造となっていることです。
一度このサイクルが発生すると、UGCがUGCを生み出しさらなる拡散や購買につながり、そしてより一層UGCが生み出される、というように自律的にULSSASが回るようになります。
その結果、大きな力をかけ続けなくても(多大な広告宣伝費を投下し続けなくても)、継続的に購買行動を後押しすることができます。
UGCは、企業のマーケティングには非常に有効なコンテンツですが、活用にあたっていくつか注意しなければならないことがあります。
①著作権
企業がUGCを活用する際は、作成したユーザーに必ず許可を得るようにしましょう。作成者に無断で、商用利用するのは著作権に違反します。
また、意図せず著作権侵害にあたる画像や音楽を使用してしまうケースも存在するので、十分注意しましょう。
②薬機法
医薬品や化粧品に関する過剰な表現などを行うと、薬機法に違反する可能性があります。なので、特に医療に関係するUGCを活用する際は注意が必要です。
例えば、「このサプリメントを飲んだおかげで10キロ痩せました」「このクリームを塗ることで肌の白さが持続します」などの表現は過剰表現にあたる可能性があります。そのため、事前に識者と相談するなどの対策を行い、リスクを最小限にしましょう。
③ステルスマーケティング
ステルスマーケティングとは、宣伝や広告であることを消費者に悟られないような形で宣伝することを指します。ステルス(stealth)とは「隠密、内密」といった意味です。
関係者であるにも関わらず中立的な立場を装って批評したり、報酬をもらっているにも関わらず直接の利害関係がない消費者のように発信したりする行為が当たります。いわゆる「サクラ」や「やらせ」もステルスマーケティングの一種です。
消費者を騙すような行為であり、一般的にはモラルに反するとされています。そのため、ステルスマーケティングと判断されれば、企業の信頼度が減少してしまうリスクがあります。
特にインフルエンサーに宣伝を依頼する際は、必ず企業との関係性を公表してもらうようにしましょう。
④情報の正確性
UGCはあくまでも一般ユーザーが生成したコンテンツなので、本当にその情報が正しいのか判断がつきにくいものもあります。
仮にユーザーが誤った情報で投稿した場合、企業の業務に支障をきたすこともあるため、掲載された情報は適度に確認しましょう。
UGCを活用すると、どのような効果が得られるのでしょうか。
UGCで商品の知名度アップ
大手コンビニチェーンのA社は、Instagramにてオリジナルハッシュタグを用いたキャンペーンを実施し、該当商品の知名度をアップすることに成功しました。
このキャンペーンは、期間中に公式アカウントをフォローし、ハッシュタグを付けて投稿したユーザーの中から「ベスト投稿賞」を決めるものです。
ベスト投稿賞に選ばれると、3,000円分のQUOカードのプレゼントと、公式WEBサイト&公式Instagramにて投稿画像を採用してもらえました。
このキャンペーンには100件以上の投稿があり、商品の知名度をより広めることができました。
ECサイトにUGCを掲載し売上向上
通販事業を営むB社は、主力商品である青汁のECサイトに、InstagramなどのSNSの投稿を掲載し、売上を向上させました。
目的は、ECサイトにUGCを掲載することにより、サイトに訪れたユーザーの購買意欲を喚起することです。また、そのサイト内で口コミを参照できるため、他サイトへの離脱を防止する効果も期待されました。
UGCを掲載しているページは、CVRがおよそ1.1倍〜1.3倍に改善し、1ヶ月あたりの売上が1,000万円強向上しました。
同梱物にUGCを活用しリピート促進
コーヒーのサブスクリプションサービスを提供するC社は、商品の同梱物の小冊子にUGCを掲載し、リピートを促進しました。
商品の同梱物にUGCを活用することで、購入いただいた方に「他の方がどのような飲み方をしているか」「他にどんな楽しみ方があるか」を知ってもらえます。 また、小冊子を見て進んで投稿しようとする方もいるため、さらなる拡散にも期待できます。
UGCは特にBtoCやBtoBtoCで重要視されることが多いですが、BtoB領域でも影響力を持っています。
一般的に、BtoB商材の購買の意思決定には、複雑なプロセスが用意されています。商材の単価も高く関わる人物も複数存在するため、BtoCのように気分や直感で購入することはなく、社内で会議や交渉などが重ねられる場合が多いでしょう。そういった際に、ホワイトペーパーや対外露出記事、社員のSNSアカウント、オウンドメディアのコンテンツなどは、社内で検討材料として共有されることがあります。
また、SNSアカウントやnoteなどを見た社員が社内で情報共有したことがきっかけで商談につながるというケースもあり得るでしょう。
社内のSlackのように、外部からのアクセスが不可能だったり会話内容のデータ取得ができなかったりするなど、情報が公開されないSNSのことを、ダークソーシャルと言います。
UGCは、誰もがアクセス可能なオープンソーシャル上で発生することが多いですが、ダークソーシャル上でも発生しており、業態を問わず購買行動に影響を与えています。
そのため、BtoB企業であっても、コンテンツマーケティングを行ったり社員がSNSアカウントを運用したりして、UGCの生成を活発化することは効果的な取り組みであると言えます。
・・・
「UGCは顧客を最強の販売員にする」
日々SNSや口コミサイトで生成されているUGCは、私たちの購買行動に大きな影響を与えています。
UGCをマーケティングに活用するためのフレームワークとして、ULSSASというSNS時代の購買行動プロセスを紹介しました。ULSSASはUGCを起点とし、ユーザー同士の「n対n」の関係が自動的に活発化していく様子を構造的に捉えたものです。
前述した3つのUGCを促進する手法を活かしながら、UGCの発生と拡散の好循環を回していくことで、BtoBビジネスの企業であってもマーケティング効果が期待できます。