新規顧客の獲得がより困難になっている現代において、既存顧客からの売り上げを最大化させる有効な手法として、アップセル・クロスセルが注目されるようになってきました。しかし、耳にしたことはあるけど詳しいことはよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな方に向けて、アップセル・クロスセルとは何か、という点から、重要視されるようになった時代背景、具体的事例まで、ご説明いたします。
アップセルとは、購入を検討している顧客や以前に購入したことがある顧客に、さらに上位のサービス・プロダクトを紹介して乗り換えてもらうことです。
クロスセルとは、現在検討しているサービス・プロダクトに加えて、さらに別のサービス・プロダクトをセット、或いは単体で購入してもらうことです。
アップセル・クロスセルは、顧客単価を上げるために非常に効果のある施策です。
なぜなら、購入を検討している、もしくは以前に購入したことがある顧客の場合は、新規の顧客よりも商品・サービスや企業への
アップセル・クロスセル以外にダウンセルという施策もあります。
顧客の予算感に合わない、そこまでのクオリティを求めていない、といった場合に、顧客の希望よりもグレードを下げて購入を促すアプローチのことです。
アップセルとは真逆の手法と言えるでしょう。
顧客単価は低くなってしまいますが、売上をゼロにすることは避けられます。購入を検討している時点でその顧客に対するマーケティングコストはかかっているので、「何も買ってもらえない」より「値段を下げて買ってもらう」方がお得です。機会損失を最小限にとどめる考え方と言えるでしょう。
グレードを下げたとしても、顧客のニーズを満たすことができればリピートに繋がることもあるでしょう。そのため、場面に応じて積極的に使用したい打ち手になります。
アップセルやクロスセルが注目されるようになったのは、マーケティングおよび営業の思想転換が背景にあります。
まず前提として、売り上げとは、大きく「顧客数」と「顧客単価」に分解することができます。このことから、売り上げを増やすには「顧客数」を増やすか「顧客単価」を上げるかの二通りの方向性があるという見方をすることができます。
この二者のうち、アップセル・クロスセルは、顧客単価を上げることを目的とした施策になります。
かつてのマーケティングや営業では、顧客数を増やすことに重きを置いていました。その背景として、第二次世界大戦以降のアメリカや日本を中心とした先進諸国は、人口が急増し経済も急速に成長したため、新規顧客の獲得が比較的容易にできたという状況があげられます。そのため、マスメディアを通して大規模な広告を打つことで認知度を高め、消費者を引きつけて大量に購買させる、という考え方が主流でした。
しかし、次第に人口の増加が鈍化し経済も成熟していくにつれて、新規顧客の獲得が以前よりも難しくなってきました。「新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍かかる」という「
(1)新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストよりも高い
(2)既存顧客から得られる収益は新規顧客から得られる収益よりも高い
という考え方が一般的になってきました。
そのため、既存顧客を大切に扱い密な関係を長く維持することで、
また、アップセル・クロスセルには、現在の「顧客単価」を上げることだけでなく、将来的な「顧客数」を増やすことにもつながるという副次的なメリットもあります。なぜなら、商品・サービスの価値を実感し、ファンになった既存顧客は、積極的に他の顧客へ宣伝・推薦してくれるようになるからです。
例えば、アップセルを行い、さらに上質な商品やサービスを提案することで、企業のコンセプトやイメージを包括的に知ってもらうことができます。
また、クロスセルを行い、関連商品やサービスを提案することで、提供ラインナップの充実ぶりをアピールすることができます。
このように、他の商品を関連させることで、一つの商品やサービスでは余していた魅力も存分に伝えることができ、結果として自社に対して愛着や好意を感じてもらいやすくなるのです。
こうしてファンになった方は、他の顧客への宣伝・推薦を自発的に行ってくれます。そのため、アップセル・クロスセルは、将来的な顧客数を増やすことにもつながるのです。
アップセルやクロスセルにはどのような事例があるでしょうか。身近なものをいくつか紹介したいと思います。
アップセルの事例
頻繁にアップセルを実施している好事例として、まず挙げられるのがクレジットカード会社です。
ご存知の通り、クレジットカードにはゴールドカードやプラチナカードなどのランクがありますが、中でもブラックカードなど最上位のランクの場合は、年会費が数十万円以上になることもあります。
こうしたランク制度を活用し、取引実績に応じて少しずつランクの高いカードへの切り替えを勧めていくことで、顧客単価の上昇を狙っているのです。
また、家電量販店でも、アップセルの実例をよく目にします。例えば、ノートパソコンを買いに来た方に対して、本人の想定していた機種よりもスペックのよい=価格の高いものを勧める、といった光景を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。「〇〇といった作業をスムーズに行うためには、これぐらいのメモリが必要」といった説明などは、まさにアップセルを狙った営業トークだと言うことができます。
クロスセルの事例
身近なところで言えば、靴屋は、クロスセルを有効に実施している例として挙げられるでしょう。例えば、革靴を購入した際に、クリーナーやブラシ、シュークリームなどといったお手入れ用グッズを勧められたことがある方も多いと思いますが、こういった売り方は典型的なクロスセルだと言えます。
また、最近のECサイトは、過去の購入履歴や閲覧履歴に基づいておすすめ商品を表示したり、購入後に「こちらの商品を購入した方は、併せてこちらの商品を購入しています」といった案内を表示したりすることが一般的ですが、これもクロスセルの一種になります。
アップセル・クロスセルには、それぞれに適したタイミングがあります。
顧客が商品やサービスに高い関心を示しているときであり、上位の製品やサービスにも興味を持ってもらえるケースが多いです。
サービスの利用・継続を決断した際に、合わせて購入すればより便利・豊かになるものを提案することで、追加購入を検討してもらえる可能性が高くなります。
①顧客視点になって提案をする
商品やサービスを購入する際、最後に決断するのはお客様です。そのため、売り手側の都合を押し付けて提案しても、うまくいかないでしょう。
アップセル・クロスセルは、お客様にいかに購入後のメリットや利用シーンを想像してもらえるかが重要なポイントです。アップグレードするメリットやセットで買うべき理由などを的確に伝えることが大切です。
②顧客ロイヤルティを向上させる
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以上のように、アップセル・クロスセルは顧客単価を増やすために有効な施策であり、日常の様々なところで展開されています。顧客単価を増やす重要性が高まっている現代においては、今後ますます多くの場面で見かけることになるのではないでしょうか。
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