カスタマーサクセスは直訳すると「顧客の成功」という意味ですが、具体的な意味について実はよく知らないという方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、カスタマーサクセスの意味や重要性について解説します。カスタマーサクセスマネージャー(CSM)という役割にも触れるので、カスタマーサクセスについて考え始めた経営者の方もぜひ参考にしてみてください。
カスタマーサクセスの意味を知るには、クラウドコンピューティング市場における世界トップクラスのシェアを誇るSalesforceのビジネスモデルが参考になります。
Salesforceは、ITシステムをオンプレミスではなくクラウド環境で提供することで、初期費用を抑え、顧客に継続的に利用頂くことによって収益を得るビジネスモデルをベースにしています。
導入しただけでは初期の収益が小さく、顧客の継続的な利用により収益が上がるビジネス構造であるため、顧客の業務改善を支援し価値を生むことで、継続的にシステムを利用いただくことに主眼を置いたことからカスタマーサクセスという概念が生まれました。
現在は、カスタマーサクセスという言葉はさまざまな企業で用いられるようになっており、会社により、多少認識や役割が異なっています。
参考として、企業向けにSaaS型のファイル共有サービスを提供している米Boxによる定義も確認してみましょう。
Boxによると、カスタマーサクセスの定義は下記の通りです。
「顧客のデジタルトランスフォーメーションを推進し、継続的な価値の提供を目的とした、長期的な健康管理」
顧客の健康管理という比喩を用いているのが印象的ですが、Salesforceの考え方と同様に、顧客の業務を改善することをさしていると考えられます。
ちなみにカスタマーサポートも顧客を支援する取り組みです。しかし、カスタマーサクセスという能動的な役割とは異なり、顧客からの問い合わせやクレームに対応するという比較的受動的なスタンスの役割の意味合いが強いと言えます。
パレートの法則をご存じでしょうか?園芸家だったイギリスの経済学者パレートが、エンドウ豆の80%が20%のサヤから収穫されたことで着想を得た経験則であり、全体の報酬は一部の構成員に依存するという法則です。
ビジネスの分野でもこの考えが応用され、顧客全体の2割である顧客が売上の8割につながるといわれています。
つまり、特に収益を生む2割の顧客に継続してサービスを利用してもらうことで、高い費用対効果を実現できるということです。その点からもカスタマーサービスの考え方が重要だとわかります。
既存顧客を定着させることだけでなく、新規顧客の獲得も売上を挙げるために重要だと考える方もいることでしょう。
もちろん、新規顧客の獲得が重要であることに議論の余地はありません。
しかし、ビジネスにおける1:5という法則、すなわち新規顧客を獲得するためには既存顧客の5倍のコストがかかるとも言われており、既存顧客からの継続的な収益増を目指す方が長期的にみて効率的であると言えます。さらに、サービスに満足する顧客が増えれば増えるほど、企業にとって顧客由来の売上が大きく膨らんでいくと考えられます。この点からも顧客の維持を基本とするカスタマーサービスの考え方は、理にかなっているといえるでしょう。
カスタマーサクセスを担当する役職として一般的なものが、CSM(カスタマーサクセスマネージャー)です。顧客の課題を発見し、提供したサービスを通してその課題を解決することでサービスの有用性を示し継続的な利用を促す役割を担います。
また、類似する役職として知っておきたいのがCCO(チーフカスタマーオフィサー:最高顧客責任者)、顧客に対して責任を行う役職です。米国では収益に対して責任を負うCRO(チーフレベニューオフィサー:最高収益責任者)と共に重要な役職として扱われます。
いずれの役職もアメリカでは一般的になっており、日本でも増えつつあります。カスタマーサクセスをコアとした事業ドメイン検討しているのであれば、CSMやCCOの重要性を把握しておいて損はないでしょう。